私が農家の嫁にはなれないと思った時
あたいの両親は両方とも北日本の同じ市出身なのだが
同じ市内でも母方は市街地出身
父方は吸収合併された郡部の農村出身である
夏休みに父方の本家に遊びに行った時のこと
祖母が「おやつでも出そうか」というので
幼いあたいは母方の祖父母の家で出るような
おやつ=水ようかんやアイスを期待した
ところが出てきたのは切っただけの生ぬるいスイカであった
憮然として「あんたも食べなさい」と言われても
親戚とは言え客にこういうものを出すのかい…と思いながら
黙ってむっとしてぬるい麦茶をすすっていた…
「私はこういう家に暮らしたくないな…」と
当時六歳の私は心に思ったのだった
数十年が過ぎある時
西日本のある都市に住んでいた時
農村部にある知り合いの家に寄ったときのこと
麦茶を供されて
農家の奥さんが「おやつでもどうぞ」と
出されたのはトマトと塩であった
知り合いは「うまい、うまい」と食べていたが
私は「お腹いっぱいですから」と苦笑いして手をつけなかった
トマトは嫌いじゃないんだけどねえ
おやつに食べるのかいな…
自分の家でとれたものを
お土産に持たすならわかるけど
お客様には茶菓子じゃないんだ…
私が農家の嫁にはなれないと思った瞬間であった…